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2025/03/13 05:27

パリの蚤の市はなぜ「蚤」なのか 

それは、古く小さなものも愛でて大切にする文化、蚤も可愛い文化だからなのです。

パリの観光本に必ずといっていいほど掲載されている「Marché aux puces(蚤の市)」。
Puces(ピュス)はフランス語で、誰にとっても好きになれないであろう、あの小さな生物の ”蚤(ノミ)” を意味するのですが、蚤がついていそうな古着や古物が集まっていることと、たくさんの古物から掘り出して見つける蚤のよう、という様を示して「蚤の市」と呼ばれているそうです。蚤がついている服は嫌だなあw 
 
少し調べてみると、19世紀後半にパリの都市整備が行われた際、退去命令を受けた廃品回収業者が、当時パリ市の境界線であった城壁の門の外側に集まり、勝手に品物を並べて売買し始めたのが「蚤の市」の始まりであるとのこと。 皆さんもよく耳にするであろう ”クリニャンクール” が、今でもパリの中では最大規模を誇っています。
ちなみに英語では「蚤の市」のことを直訳して、蚤を意味する ”flea(フリー)” から ”フリーマーケット” と呼ばれていますよね。皆さんにとってはこちらの方が、親しみがあるかもしれません。 
ちなみに、私は夫から時々「Ma puce(マ ピュス)」って呼ばれるんですが、フランス人にとっては ”可愛い蚤ちゃん” という意味らしいのです。とはいえ、私は蚤は嫌いなのでやめてと彼にお願いするものの、フランス人にとって蚤は可愛いい対象で愛着のある大切なものの比喩として使わっているのだそう。私には全く理解できませんが、フランス人という存在が古く小さなものも愛でて大切にする、”蚤” も可愛い文化だからなのだからでしょうか…。 だけど、やっぱり嫌でしょう?蚤ちゃんって言われるの(苦笑。

私が蚤の市で見つけた素敵なものたち

BrocanteとVide greniers 


パリの「蚤の市」には、大きく分けると二種類あります。
一つ目は「Brocante(ブロカント)」、二つ目は「Vide greniers(ヴィドグルニエ)」です。
ブロカントは骨董を扱うプロでなければ出展が許されないため、品質も価格もしっかりしている反面、ヴィドグルニエは日本で言うフリーマーケットに似ていて、自治体や個人が不要になったものを安価で売っているという違いがあります。 
ブロカントはパリの北と南で開かれる2箇所が有名です。パリ北部では、先ほどもお伝えした、パリでは一番有名な「クリニャンクール」、パリ南部では「ヴァンヴ」で毎週末開催されています。業者は登録制で、簡単には出展できません。長年そこで商売をしているプロがいるのです。北のクリニャンクールは常設店舗もあり、大型家具やアートも多数、高価な掘り出し物も見つけることができます。
南のヴァンヴは食器や衣類、アクセサリーなどが中心で、常設ではなく毎週末に大きな車を通りに乗り付けてお店を出すスタイル。
私が住んでいる6区からはどちらもバスで30分程度ですが、私は南のヴァンブのほうをおすすめします。大型の家具や照明、特別に高級なものが欲しい方にはクリニャンクールで、プロの買い付けには向いていますが、クリニャンクールのの治安が良くないので、行くまでに道に迷ったり、少し地域を外れたところは旅行者にとっては気をつけなければいけません。
以前、近隣を散歩していたら人が多いマルシェのような場所に入り、売っているもののほとんどがブランドの偽物で、怪しいお方が多数いらっしゃいました。こういう場所に観光者、特に日本人は狙われるので気をつけてください。

クリニャンクールは常設のお店がたくさん。掘り出し物もたくさんあります。

クリニャンクールにあるクリスタル系光り物骨董専門店。 アンティークのクリスタルシャンデリア、いつか欲しいなあ。

街灯、ライオン、銅像。クリニャンクールにはなんでもある。きっと誰かの豪邸のために売られているのでしょう。

Vide greniersにお店出してみる?


一方、ヴィドグルニエは、毎週末パリの至る所で開催されています。
ヴィドグルニエは、Vide greniersなのですが、空のVide  屋根裏部屋Grenier  という意味で、屋根裏部屋のガラクタを空にしちゃおうぜということ。お父さんが昔集めていたレコード、おばあちゃんが手で編んだショール、家をリフォームした時の壁紙の残りなどなど、日本でも屋根裏部屋や倉庫にいろいろ入っていますよね。
そんな愛すべきガラクタたちが久しぶりに外に出て新しい家を見つけるのがVide greniersなのです。
今週末は天気が良さそうだし、家族でパリを散歩しようという予定のない週末、私はヴィドグルニエの開催スケジュールをチェックします。
子供達は読みたい本を探したり、私は金物や食器を。人によって趣味が違うし、売っているものも違うのでそこがまた面白いのです。
そして最近よく耳にするのが、大量生産・大量消費に反対しているから新品を購入しないんだという人たち。 確かに、ものにもよりますが新品で買うより古いもののほうが品質もデザインも良いことが多いと私は思います。

パリに来て、Vide greniersに行く時はこのサイトを見てください。
中心部の番号が少ない1から7区あたりのほうが良いものが並んでいる気がします。

ただ見に行くのも良いし、出展するのも簡単。
ブロカントとは違って資格も登録も不要。申し込みをして事前に出店料を送金し、当日の朝に売りたいものをその場所に持っていってテーブルの上に並べる、これで全て準備完了。小さなお釣り用の小銭を用意してね。

私も去年、季節のいい夏の終わりから秋にかけて3回出店してみました。
日本から持ってきたけど使わなかったもの、またはパリの店舗に仕入れたけど、売れなかったものなどがたまってきてどうしようと思っていたところ、パリに住んで長い友達から「ヴィドグルニエがあるよ」と教えてもらっての初挑戦でした。
子供服、本、食器など、その人にとっては不要物と思われるものだって、誰かにとっての宝物になる可能性があるものはたくさんあります。時にはフィギュアなどのコレクションを見せびらかしたい気持ちで出店する人もいます。要は別に売れなくてもいいんですけど、みんなに見せたいのですよね(笑)。
道行く知らない人とおしゃべりを楽しんで終日エンターテイメント的な気分で参加する、それがヴィドグルニエなのです。話好きのフランス人っぽいですよね。規模は様々ですが、小さくても50店舗、大きくなると300店舗がヴィドグルニエの通りに並びますので、開催しているのを見つけたらお散歩がてらぶらぶらして、宝物探ししてくださいね。店主とのおしゃべりを楽しむこの時間を、私はとてもお勧めします。

東京昆布のエプロンをつけているのは夫。帯や羽織などたくさん売れました。
 
パリの中心を通るリボリ通りのヴィドグルニエ。
フランスだけでなく世界中の骨董が集まるモンジュ通りのヴィドグルニエ

何が欲しい? どうやって買うの? 


ちなみに、パリに遊びにきた友人・知人には、お土産用には銀食器をおすすめしています。
日本ではなかなか手に入らないし、何よりも家での食事を豊かに彩ってくれるのです。銀食器を磨き、テーブルセッティングをする日常は、生活を美しくしてくれると私は思います。
せっかく足を運んだのであれば、指輪やネックレスなどのアクセサリーなど、日常のおしゃれに使えるアイテムも探してみてください。日本はジュエリーをたくさんつける文化がないので、アンティークのジュエリーってあまりないのですが、フランスでは200年前のジュエリーを普通に見つけることができます。その当時の職人が手作業で作った工芸品の美しいこと!値段はピンキリですが、ヴィドグルニエの場合だと、本物か偽物か判断できなければ高価なものは買わないことが鉄則です。

美しいお皿たちは柄を見てまわるだけでも楽しめるヴァンブの蚤の市

テーブルに所狭しと並ぶアンティークたち ヴァンブの蚤の市

高価なものはこの箱の中に入っていて鍵がかかっている ヴァンブの蚤の市

食器は本銀とメッキ、ステンレスがあるのでよく見て買いましょう  ヴァンブの蚤の市


「これぞフランス!」というような美しい絵付けのティーカップセットやお皿をたくさん見つけることができます。
クリスタルのシャンパングラスも息を呑むほど繊細で美しいのですが、帰りの荷物を詰め込みすぎて帰国した時に荷物を開けたら割れてしまった…ということもよく聞く話です。せっかく買ったパリの蚤の市のお土産が割れてしまうのは悲しいので、割れ物は買わないと決めるか、荷物をパンパンにせずにしっかり梱包をするか、どちらか決意を持って購入することでしょうか。

フランス語や 英語ができなくたって、「私、未来のために買い付けしているのよ」という感じで大丈夫です。
もちろんフランス語が喋れなくても楽しめます。お店の人はほとんどが英語OKなので、指差しや、これハウマッチ?で英語の数字さえ聞き取れることができれば、買い付け完了! 
というもののやはり、フランス語が話せるともっと楽しい蚤の市。
お店のおじさんたちはユーモアの溢れる素敵なジェントルマン。蚤の市に並べているものたちの歴史と、なぜこれが気に入っているのかという話を語ってくれますし、値引き交渉はフランス語の方が上手くいきますよ。

最後までゆっくり見て回ると1時間はかかります  ヴァンブの蚤の市

出店しておしゃべりとカフェを楽しむマダムたち  ヴィドグルニエ

MATERIALにもあります。

フランスの古く小さなものも愛でて大切にする文化、いかがでしたか?
日本でも昨今、中古の服を楽しめる文化が、私の世代あたりからはようやく理解のある方が増えてきましたが、それ以上の年齢の方はやはり「中古はいやよ」という人も多いですよね。
フランスにおいては新しいものしか買わないというのは珍しく、親から引き継いだ家具や食器、絵画など、どこの家にもあります。
日本では稀ですが、家も古い家の方が家賃が高いのですよ。新しいものよりも古く長く愛されたものの方が価値が高い。それがフランスなのです。
 
そしてそんな「蚤の市」で見つけた宝物たち、MATERIALでも売っています。


こちらから。

これからも増やしていきます。リクエストがあったら教えてくださいね。

夏水